労働基準監督署が会社に来ると潰れると言われる5の理由

労働基準

労働基準監督署が会社に来るという事自体がそうそうない事だが、もし入った場合、会社がつぶれてしまうのでは?と思っている人も多いのではないだろうか。

しかし労働基準監督署が検査に入ってもいきなり会社が潰れるという事はない。

実際に労働基準監督署が入ったとして、行うのは「是正勧告」か「指導票」である。これ自体には強制力がなくとも放置してしまえば検察庁から書類送検や逮捕されるなどの処罰が下ることとなる。

また、未払いの残業代の再計算と支払いの義務もあるので経営が圧迫されることもある。

こうなると報道などで取り扱われるなど、企業の社会的な信用が下がり会社の衰退が考えられる。また、未払いの残業代を払う事やその未払いの金額や人数によってはこの支払ができないことで倒産と言う可能性がでてくるのである。

では、労基署が入ったら潰れると思われる理由を追っていこう。

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労働基準監督署が会社に来ると潰れると言われる理由

①立ち入り調査で交付される書類について

労働関係法規違反があると認めた場合には、「是正勧告書」が交付される。

また法令違反とまではいえないが改善を図る必要があると判断した場合には「指導票」を交付される。どちらにしても実は是正勧告や指導は、行政指導なのでそれ自体には強制力はない。

多くの場合にはこの是正勧告書と指導票の両方が交付されるので、事業主は必ず指導された期限までに是正勧告書や指導書に対し、会社が行った改善の報告書、是正報告書を作成し提出しなければならない。

しかし、これらを事業主が放置して改善の意思が見られないなどの悪質と判断される場合や、違反事項が原因で労災が発生した場合、労働基準監督官は「検察庁に送検手続きをとる」ことができる。つまり書類送検や逮捕され、懲役刑や罰金刑などの刑罰が科されるわけである。

これは刑罰に問われるだけだはなく、マスコミなどに取り上げられれば社会信用を欠くこととなり、会社は段々と衰退していく可能性がある。

②長時間労働について

未払残業が確実に発生している場合は是正勧告書、未払い残業の発生の疑いならば指導書が交付される。この支払で会社が潰れると言う話もあるようだ。

調査が入り未払残業代を支払わなければならないという指摘を受けた場合、是正期日までに未払い残業代の支払いを行うこととなる。

そのため、その未払い残業代の金額の計算が必要だが、計算を誤り未払が残ってしまうと再度の調査や是正勧告を受ける事にならないよう、未払残業代の計算は慎重にしなければならない。

再提出が続くと悪質性が高いと言う認定が起きる事態も考えられる。

未払残業代の時効は2年だが、一般的には2か月分~6か月分程度をさかのぼって精算求められることが多く、悪質性が高い場合でなければ2年分をさかのぼって未払残業代の精算をするように是正勧告書や指導書で求められるという可能性は低い。

とはいえ、この未払残業代の請求が少額であればいいが、人数が多く金額も大きいと言う場合には会社の資金に影響が出て、零細企業であれば潰れる可能性もある。

さらに同時に民事裁判をかけられている場合には2年分の残業代の請求をされるケースもあり、そうなるとかなり経営が傾く可能性もあるだろう。

③一定規模以上の労働災害について

労働災害が起きたときに労働基準監督署が入ってくることも。

一定規模以上の労働災害が起きた場合には労働基準監督署の調査対象となるのである。万が一、大事故が起きてしまった場合には責任問題から会社が傾き潰れる可能性もあるだろう。

一定規模以上の労働災害が発生した場合、その原因究明と再発防止のために行う調査災害時監督というものがある。

労働災害の事故現場の確認だけでなく、安全管理体制や労働時間管理が適切であったかなども調査対象になる。この調査で危険で過酷な状況が見られれば指導が入る事となり是正勧告の対象となる。

安全に仕事をしていける環境が整っていない事は労働環境が悪いという事だ。

企業は労働者が安全に働くことができる環境を整える「安全配慮義務」を負っている。この安全性についても監査の内容の一つである。これは通勤中の事故なども通勤災害として扱われる。

④雇用契約書、就業規則、有給休暇取得記録について

仕事をするに当たって、雇用契約書や就業規則といったもの、そして正しく休みが取れているのか、確認できるように勤務表が必要である。過剰出勤がないかの実態調査や規則遵守の提出などができないと突っ込まれることになる。

特に就業規則がしっかり書面で存在することが大切である。この就業規則に従って法令と照らし合わせ労働基準監督署は調査をしていく。

この就業規則は10名以上の会社では作る事は義務となっているのでない場合には義務違反で30万以下の罰金となる。

10名未満では義務はないが、この規則がないと何か問題が発生した場合に解雇する理由にならなかったりいろいろなトラブルの原因になりえる。

有給や病休の規定、残業代の明確化、副業規定、服務規程が明確にならないと労働基準監督署が入ってきたときに会社として、雇用について説明ができないため、会社として不利に立たされることになり、何かしらの罰金や追加金請求があれば小さな会社であれば耐えられずに倒産もあり得るだろう。

⑤健康診断等について

職員の健康診断やストレスチェックがなされていない事も法令順守違反の原因になる。

軽くみられやすい健康診断だが、法律上決められた健康診断回数を受けていない場合には是正勧告の対象となります。また、従業員数によってはストレスチェックも今は必要となる。

しっかりとした法律遵守必要だ。たかが健康診断と侮っていては社会的信頼を失い、会社の存続の危機になりえるのだ。

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よく聞かれる労働基準監督署の疑問と回答

Q
労働基準監督署に立ち入り調査に入られて会社が倒産、こんな事はあり得るのでしょうか。
A

直接の原因とは言えないようである。是正勧告を無視して経営者が逮捕されると言う事体が企業のイメージダウンである。また未払い請求で経営悪化からの倒産ということがあり得ると言える。逆に入ったことで企業のクリーン化が進み、過ごしやすくなったという話もみられている。

Q
労働基準監督署が本気を出したら会社を潰す事は可能ですか? 労基法あからさまに違反しとる会社にはどういう行動するのでしょうか
A

是正勧告自体に強制力がないからと無視をするようなことがあれば、検察庁から送検と逮捕と言う事が待っている。決して甘く見ないで対応する必要がある。逮捕されたときに他に経営を引き継ぎ適正化する人間がいれば存続はできるだろう。労働基準監督署自体に潰すという機能はない。

Q
従業員の家族が就労時間や心身を心配して労働基準監督署に相談したのがきっかけで査察に来たようですが、従業員からは密告者の特定を告げることが絶対にないとするなら、別のルート(たとえば労働基準監督署や他の公共機関、又は裏社会系)から労働基準監督署への密告者の名前を社長が聞き出すことが出来るのでしょうか?
A

労働基準監督署の職員には情報の守秘義務があるので情報漏洩はありえない。しかし小さな会社では誰なのか噂で分かってしまう事があるだろう。労働基準監督署の職員に匿名にするのか相談できるので、匿名にしない場合には名前を告げて調査に入ることになる。

労働基準監督署が入ったからと言って必ずしも潰れるという事ではない。しかし、この機関が入ってくるという事は会社内部ですでに崩壊の予兆が起きているという事である。

従業員の心が離れ、繋ぎとめる力のない企業であれば大きな立て直しが必要になっているという事である。それができない場合に待っているのは会社の倒産という事実である。

労働監督署に訴え出たということはすでに企業に対して対立する意思ができたと言えるだろう。

一人の訴えが会社全体を揺るがす事になるので半端な気持ちで訴え出る人はいないのだ。