住友化学が潰れると言われる理由と考察、これからについて。

住友化学

出典:住友化学

住友化学は、1913年愛媛県に設立。国内化学メーカーとしては、三菱ケミカルグループに次いで2番目の規模である。

住友化学グループはエッセンシャルケミカルズ部門、エネルギー・機能材料部門、情報電子化学部門、健康・農業関連事業部門、医薬品部門の5事業部門で、多くの産業・企業や人々の生活を支える製品を世界的な規模で提供している。

特に家庭用・園芸用殺虫剤原料のシェアは世界トップクラスである。

住友グループの総合化学企業大手である住友化学に2023年11月、衝撃が走る。

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11年ぶりの赤字となる

2023年11月1日、通期の連結最終損益が950億円の赤字になる見通しとの発表がなされた。100億円の黒字の予想から、2000年以降で赤字幅は過去最大である。

中国景気の減速や、サウジアラビアなどで手掛ける石油化学(石化)事業が想定を下回るほか、農業関連事業が低迷とのことだ。

2023年11月1日の決算会見で、岩田圭一社長が「創業以来の危機的な状況」と述べた。

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大きな影響を与えた石化事業

大きな影響を与えたのが石化製品などのエッセンシャルケミカルズ部門である。

中国経済の悪化などアジア圏のプラスチック(合成樹脂)などの販売が落ち込んだ。

サウジアラビアの国有石油会社であるサウジアラムコとの合弁石油精製&石化会社である『ペトロ・ラービグ』が、市況の悪化で業績不振に陥ったことも要因の一つである。

健康・農業関連事業部門でも、鶏などの飼料添加物「メチオニン」が中国企業などと競争が激しく、価格下落により減損損失を計上した。

連結子会社である住友ファーマが、抗精神病薬「ラツーダ」の特許の壁といわれるパテントクリフを乗り越えることができず、24年3月期第2四半期のコア営業損益がマイナス658億円に転落した。

そして、米国での独占販売期間終了でジェネリック品が浸透。さらに新薬の開発で研究開発費用がかさんだ。

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化学業界各社の業績が急降下

化学業界が窮地に立たされている。

住友化学だけではなく、レゾナック・ホールディングスやJSR株式会社といった日本の化学メーカーの大手が2023年度上半期決算で最終赤字を計上し、旭化成や三井化学なども通期の見通しを下方修正した。

化学業界全体で中国の経済の悪化が影響している。

中国は石化製品の生産地として重要となっている。中国での需要減少によって需給の悪化がアジア全体に及ぼし、業績の足を引っ張った。

また、コロナ禍における半導体不足から半導体関連の需要低迷で業績悪化につながった。

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株価が6割暴落?

2024年2月、株価が大幅に下落した。当時は投資する意味すら問われる暴落だった。

しかし、2024年4月24日現在では、2024年2月以前の株価に近い数字となっている。

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韓国に半導体洗浄薬の新工場

2024年4月23日、韓国の東友ファインケム株式会社(100%子会社)の益山工場で半導体用高純度ケミカルを扱っていたが、工業用地を約2倍に拡大すると発表があった。

2027年に稼働予定で、この工場により2030年度には世界での生産能力は23年度比で5割増えると予測されている。

また、ソウル近郊には研究開発センターが設立される予定だ。

この点について投資家の間では、

リスクしかない韓国に新設する経営陣の考えに疑問を感じます。

半導体分野に今後力を入れるということやね。

など、中立的な予想となっている。

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これから

今後の取り組みとして、同社は業績回復に向け、石化事業を含めて構造改革に取り組んでいる。

短期集中型の業績改善策である、24年度末までに事業の再構築や政策保有株式の売却などついては既に成果が出始めている。

化学メーカーは人々の経済活動が大きく影響する分野である。

しかし、大きな工場の建設の着手など、資金力や経営力でもまだまだ大手には強みがある。

また、コロナ禍から経済活動が元に戻り、半導体分野などの需要を考えると今後も期待ができるのではないか。